工芸のあり方は様々な変遷を遂げました。自給自足の原始時代から、次第に専門の職人が生まれ、千利休のような工芸プロデューサーが現れ、流通を担う問屋が登場。日本各地に産地が誕生し、多くの人々の手に工芸が渡るようになりました。しかし近代以降は職能の分化が極端に進み、作る人と使う人の距離は次第に遠くなり、工芸を身近に感じることは少なくなりました。私たち中川政七商店が未来に描く工芸のビジネスモデルは、そんな作る人と使う人の距離を近づける、産業観光モデルです。 ここでは奈良を舞台に、特産の麻織物、奈良晒を中心とした産業観光が始まっています。奈良晒の工房ではその工程がオープンにされ、訪れた人々が間近に見学し、体験できます。隣には作られた商品を購入できるファクトリーショップや奈良の伝統食材、大和野菜を使った料理が味わえるレストランが並びます。旅行者も地元の人も、ここで産地と工芸の魅力に触れ、暮らしの中に持ち帰ります。例えばファクトリーショップを訪れた家族連れが、そこで買った麻の産着を子供に着せてお宮参りをするというように。そうして作る人と使う人の距離が近づき、暮らしの中で自然と工芸に親しむ、そんな開かれた工芸を、私たちは目指しています。