みんなでつくる時代 紀元前10,000年頃〜600年頃

工芸の歴史は石器時代から始まります。石器は、古くから生活資源を獲得するための重要な道具であるとともに、生活用具としての工芸でした。縄文時代の社会構造は、共同体がベースにあり共同体全員のために生産し、平等に分配されたと言われており、原始の工芸はみんなで作り、みんなで使うものだったと考えられます。石器は、日常生活の中で使いやすく長持ちするように変化していく「用の美」としてかたちづくられました。中川政七商店の創業地である奈良の地では、縄文時代草創期の国内最大の石器材料となるサヌカイト(ガラス質の岩石)の採掘坑跡が見つかっており、盛んに石器作りをしていたと思われます。

自給自足のモデル

原始時代は基本的に小さな共同体で自給自足が成立していたため、貨幣経済の中で流通する付加価値を持った商品という意味での工芸は厳密には存在しえない。
しかし、特定の産地の原料を使ってものづくりをするという意味で、この石鏃は工芸のアーキタイプのひとつと言え、中でも原料のサヌカイトを得るために水運が使用されたことなど、のちの工芸を考えるうえでも欠かせない要素が登場していることは見逃せない。

No.002

石鏃 Sekizoku

みんなでつくり、みんなで使った紀元前の工芸品

石鏃