工芸の歴史は石器時代から始まります。石器は、古くから生活資源を獲得するための重要な道具であるとともに、生活用具としての工芸でした。縄文時代の社会構造は、共同体がベースにあり共同体全員のために生産し、平等に分配されたと言われており、原始の工芸はみんなで作り、みんなで使うものだったと考えられます。石器は、日常生活の中で使いやすく長持ちするように変化していく「用の美」としてかたちづくられました。中川政七商店の創業地である奈良の地では、縄文時代草創期の国内最大の石器材料となるサヌカイト(ガラス質の岩石)の採掘坑跡が見つかっており、盛んに石器作りをしていたと思われます。